放送衛星(Broadcasting Satellite)の活用と歴史

2022/07/14

宇宙 人工衛星 放送・通信

t f B! P L
DIRECT BROADCAST SATELLITE by NASA/Glenn Research Center
DIRECT BROADCAST SATELLITE
by NASA/Glenn Research Center
Identifier C-1967-868
Public Domain 1967


放送衛星(Broadcasting Satellite)は、赤道上空約35,786kmの静止衛星軌道にある静止衛星に中継器(トランスポンダ)を設置し地球上から送信(アップリンク)した電波を受信した後、異なる周波数に変換し地球上に向けて再送信(ダウンリンク)し、その電波を視聴者・聴取者がパラボラアンテナで受信する放送である。静止衛星軌道からは地球のほぼ半球が見えるため、放送受信範囲が限定される地上波放送よりも大幅に広い範囲での受信が可能である。日本で導入された当初は地上波のテレビ放送を見ることができない離島・山間部など人口希薄な地域における難視聴地域の解消(すなわち既存放送コンテンツの再送信)を目的としていたが、その後、地上系による放送では出来ない様な専門性の高い番組を提供するなどチャンネルを増やす目的の放送が広く行われるようになった。
米国では早くからケーブルテレビ(CATV)が普及したが、地上の設備が少なくて済むため、CATVの普及が進んでない場所では、衛星放送の方が普及している場合もある。アジアやヨーロッパなどでは国境を超えた衛星テレビ放送が普及している。

人工衛星を用いることで地上設備を衛星への送信(アップリンク)のみに簡略化でき、宇宙空間上の衛星から地表へ向けて広範囲に送信できる。このため地上のアンテナで問題になっていた放送エリアの問題が解消されると同時に、より多くの情報量を容易に放送できるようになった。しかし、衛星放送を行うには膨大な初期費用が掛かることから、導入までのハードルは高い。また放送が開始できたとしても宇宙空間に配置される人工衛星という性質上、決して手軽ではない維持管理や事故への対処の難しさ、衛星の寿命、さらには地球大気中の降雨の影響を受けて、電波を受信できなくなる問題など様々な問題もある。
近年は、技術革新によって比較的安価に衛星が製作できるようになり、衛星を静止軌道に配置するためのロケットの打ち上げ費用も、技術革新や各国間の競争原理が働きかなり安価になってきたことから、常に代替となる予備機を準備して安定的に運用される様になっている。
衛星放送は、Cバンドの4GHz帯とKuバンドの12GHz帯の周波数を使用している。Cバンドの波長は約75mm、Kuバンドの波長は約25mmであり、波長の短いKuバンドでは天候によって映像状態に悪影響がでる。すなわち大雨となると雨滴が大きくなり、短い波長の電波ほど雨滴にぶつかり、電波が減衰しやすくなり、テレビの受信画像が乱れるなどの現象が出る(大雪・その他、気象の状態によって、全く映らなくなる場合もある)。
降雨による影響は基本的には受信パラボラアンテナの直径を一回り大きくすることで、集める電波も増え、受信障害が解決できるとされているが、パラボラアンテナが大型化すると積雪や風の影響を受けやすくなる問題も内包している。



放送衛星の歴史

  • アナログテレビジョン放送 BSアナログ放送(1989年(平成元年)6月放送開始 - 2011年(平成23年)7月24日まで。地上アナログ放送と共に終了)
  • デジタルテレビジョン放送 東経110度BSデジタル放送 - 放送衛星システム(2000年(平成12年)12月放送開始)

これまでに打ち上げられた放送衛星

衛星名  国際標識番号      
 NSSDC ID  
カタログ番号 衛星バス 打上日      (UTC) 運用終了日     (UTC) 打上機 搭載機器
ミッション機器
BSE  
ゆり1号
1978-039A 10792 1978-04-07 1982-01-28 デルタ2914型ロケット 140号機 放送機器
TWTA 100W 放送用中継器
本体寸法 1.32 × 1.2 × 3.09 m
質量 352 kg
姿勢制御方式 三軸姿勢制御方式
BS-2A
ゆり2号a
1984-005A 14659 Lockheed-
Martin (GE) 3000
1984-01-23 1989-07-01 N-IIロケット5号機(N12F)  放送用中継器(出力各100ワット、他に予備用TWTA1式)2チャンネル
放送用アンテナ1基
直径 1.30 m
高さ 3.00 m 質量350 kg
BS-2B
ゆり2号b
1986-016A 16597 1986-02-12  1991年10月 N-IIロケット8号機(N14F)  放送用中継器(出力各100ワット、他に予備用TWTA1式)2チャンネル
放送用アンテナ1基
直径 1.30 m
高さ 3.00 m 質量350 kg
BS-2X 1990-02-22 (打ち上げ失敗) アリアン 44L
BS-3A
ゆり3号a
1990-077A 20771 GE SATCOM 3000 1990-08-28 1998-04-20 H-Iロケット7号機(H22F) 放送用中継器 3チャンネル(出力各120ワット、他に予備用TWTA3式)
放送用アンテナ 1基
本体寸法 直径: 1.60 m
高さ: 3.20 m
質量 550 kg
姿勢制御方式 三軸姿勢制御方式
BS-3H 1991-04-19 (打ち上げ失敗) アトラスケンタウロス
BS-3B
ゆり3号b
1991-060A 21668 GE SATCOM 3000 1991-08-25 1999-04-05 H-Iロケット8号機(H23F) 放送用中継器(出力各120ワット)3チャンネル
予備用TWTA3式
放送用アンテナ1基
本体寸法 直径1.6m
高さ3.2m
質量 550 kg
BS-3N 1994-040B 23176 GE-3000 1994-07-08 アリアン 44L
BSAT-1a 1997-016B 24769 ヒューズ
HS-376
1997-04-16 2010-08-13 アリアン4 トランスポンダー
バンド Ku バンド: 4 (プラス 4 スペア)
カバレッジエリア 日本
ティッカーパワー 106ワット
質量 723.0kg
BSAT-1b 1998-024B 25312 ヒューズ
HS-376
1998-04-28 2011-08-30  アリアン 44LPV-95 トランスポンダー
バンド Ku バンド: 4 (プラス 4 スペア)
カバレッジエリア 日本
ティッカーパワー 106ワット
質量 723キログラム 
寸法 3.15 m × 2.17 m
BSAT-2a 2001-011B 26720 オービタル・
サイエンシズ  STAR-1
2001-03-08 2013-01-29 アリアン5G V-140 トランスポンダー
バンド 4 (プラス 4 スペア) Ku バンド
ティッカーパワー 130ワット
535 kg (1,179 lb)
Dimensions 3.76 m × 2.49 m × 2.03 m
BSAT-2b 2001-029B  26864 STAR-1 2001-07-12 (軌道投入失敗) アリアン5G V-142 トランスポンダー
バンド 4 (プラス 4 スペア) Ku バンド
ティッカーパワー 130ワット
質量 535 kg (1,179 ポンド)
寸法 3.76 m × 2.49 m × 2.03 m
BSAT-2c 2003-028A 27830 STAR-1 2003-06-11 2013-08-01 アリアン5GV-161 トランスポンダー
バンド 4 (プラス 4 スペア) Ku バンド
ティッカーパワー 130ワット
質量 535 kg (1,179 ポンド)
寸法 3.7 m × 2.5 m × 2 m
BSAT-3a  2007-036B 32019 ロッキード・
マーティン
 A2100A
2007-08-14 運用中 アリアン5 ECA (VA-177) トランスポンダー
バンド 8 (プラス 4 個のスペア) Ku バンド
カバレッジエリア 日本
ティッカーパワー 130ワット
質量 927キロ
寸法 3.8 x 1.9 x 1.9 m
BSAT-3b 2010-056B 37206 A2100A 2010-10-28 運用中 アリアン5 ECA (VA-177) トランスポンダー
バンド 8 (プラス 4 個のスペア) Ku バンド
カバレッジエリア 日本
ティッカーパワー 130ワット
質量 975キロ
寸法 3.8 x 1.9 x 1.9 m
BSAT-3c/
JCSAT-110R
2011-041C 37776 A2100A 2011-08-06 運用中 アリアン5 ECA トランスポンダー
バンド B-SAT: 12 K Uバンド JSAT: 12 × 36 MHz Kuバンド
カバレッジエリア 日本
パワー B-SAT: 120 ワット
2906キロ寸法 5.3 x 2.0 x 1.9 メートル
BSAT-4a2017-059B 42951 Space Systems/Loral 
SSL1300
2017-09-29 運用中 アリアン5 ECA トランスポンダー
バンド 24 KUバンド
カバレッジエリア 日本
 3500キロ
BSAT-4b 2020-056A 46112SSL1300 2020‐08-15運用中 アリアン5 ECA トランスポンダー
バンド 24 KUバンド
 3500キロ

ゆり1号 実験用中型放送衛星(BSE)

実験用の通信衛星である。本体は不規則な形をしているが、ほぼ立方体である。長さ8.95m、幅1.48mの長方形の太陽電池パネルが左右対称に翼状に伸びており、太陽電池パネルを回転させることで最大限の日射量を得ることができる。衛星のもう一方の側面には、日本が関心を寄せる主要な地域を効率的に照射できるように設計された、複合3角ラジエータを備えた楕円パラボロイドアンテナディスクが搭載されています。衛星とアンテナを合わせた高さは3.09mで、衛星本体は幅1.32m、長さ1.19mです。ゼロモーメンタムホイールとヒドラジンスラスターを用いた能動的な3軸安定化制御を採用。ポインティング精度は0.2度以上でした。衛星は、東経110度付近で3年間の寿命を持つように設計されていた。実験では、衛星制御/テレメトリおよびテレビ伝送の研究のために2.1、2.3、12、および14GHzの周波数が使用された。テレビ信号の特性、12GHzでの降雨減衰、衛星/地上端末の性能、地上/衛星の周波数共有、衛星制御技術、衛星放送の運用、テレビ信号の品質評価などの研究が行われた。


ゆり2号a  BS-2A(放送衛星2号機)

宇宙開発事業団(NASDA)が種子島宇宙センターから打ち上げた衛星。テレビ受信障害地域の解消と放送衛星の技術開発を目的として開発された。送信周波数と出力は、11.91928GHz・100W、11.99600GHz・100W、11.70299GHz・0.1W、2276.99MHz・1.3Wであった。

ゆり2号b  BS-2B(放送衛星2号機)

宇宙開発事業団種子島宇宙センターからN-2ロケットで打ち上げられた。衛星の国別名称は「ゆり2号b」。BS-2計画のミッションは、テレビ受信障害地域の解消と放送衛星に関する技術開発であった。

ゆり3号a  BS-3A(放送用人工衛星3号機)

H-Iロケット(H22F)で種子島宇宙センターから打ち上げられた。BS-3Aは、日本全国と沖縄・小笠原諸島に直接放送を行うBS-2シリーズの後継機で、中継器の出力を100Wから120Wに、チャンネルを2から3に増やし、寿命を5年から7年に延ばしたのが特徴です。また、20Wの広帯域トランスポンダの実験では、ハイビジョンテレビの伝送実験を行った。ペイロードは14/12GHzで運用されました。GEアストロスペースと日本電気が製作したこの衛星は、GEのSATCOM 3000バスをベースに、日本製のトランスポンダ、アンテナ、アポジキックモータが搭載されています。衛星は1.3×1.6×1.6mの箱型で、太陽電池パネルを展開した状態で15mに及ぶ。アンテナは、軌道上で全高3.2mまで伸びるシェイプドビーム型パラボラアンテナを搭載し太陽電池パネルの出力は1,443W。日本の打上げでは恒例となっている、衛星の名称変更も行われた。この「ゆり3号a」は10月に東経110度の静止軌道に乗った。運用は日本電気通信衛星株式会社に引き継がれた。

ゆり3号b  BS-3B(放送衛星3号機)

H-Iロケットで種子島宇宙センターから打ち上げられた。12/14GHz帯で動作する120Wのテレビジョン放送用トランスポンダを3基搭載しています。2基は日本放送協会(NHK)、もう1基は日本衛星放送(JSBC)が使用した。 BS-3Bは、完全冗長化されたバックアップチャンネルと、ハイビジョンテレビの実験伝送用の20W広帯域トランスポンダを搭載している。衛星は日本電気株式会社(NEC)が製造し、GE社のSATCOM 3000バスをベースにしている。大きさは1.3m×1.6m×1.6mで、太陽電池アレイは先端から15mの長さに及んでいる。宇宙空間では「ゆり3号b」と命名された。110度以上で動作し、寿命は7〜9年である。

BS-3N

フランス領ギアナのクールー宇宙センターからアリアン44Lロケットで打ち上げられた日本の静止通信衛星である。太平洋地域の国々にサービスを提供する。

BSAT1A

アリアン44LPロケットでクールー宇宙ステーションから打ち上げられた静止通信衛星です。日本放送衛星システムのために製作されたヒューズ衛星は、東経110度に位置し、日本全国1200万以上の顧客に直接放送のアナログテレビを提供した。3軸の安定性を持ち、2kWの電力を発生させた。Kuバンド・トランスポンダを8個搭載していた。

BSAT1B

アリアン44LPロケットでクールー宇宙ステーションから打ち上げられた静止通信衛星である。日本の放送衛星システム株式会社のために作られたヒューズ衛星で、東経109.9度に位置し、小型で安価な受信アンテナを持つ家庭に4チャンネルの視聴機能を提供しました。日本放送協会(NHK)、日本衛星放送網(WOWOW)など。BSAT-1A同様、Ku帯でアクティブ4基、スペア4基の高出力中継器を搭載し、106Wの進行波管増幅器を使用した。BSAT-1Aのバックアップとして製造され、契約期間は10年。

BSAT 2A

日本の静止通信衛星で、アリアン5ロケットにより世界時22時51分にクールーから打ち上げられました。1.3トン(燃料込み)の衛星は、東経110度上空に設置され、音声、映像、インターネット通信を直接各家庭に提供します。

BSAT 2B

2001年7月12日23時58分(UT)にクールーからアリアン5ロケットで打ち上げられた。ロケットの最終段の推進力に問題があり、1.3トンの衛星はかなり低い高度で軌道を周回することになった。BSAT 2Bはエンジンを1基しか搭載していないため、その点火が軌道を大きく持ち上げるには不十分だった。

BSAT2C

2003年6月11日22時38分(UT)にクールーからアリアン5ロケットで打ち上げられた。Kuバンドの中継器により、日本及び近隣諸国の家庭に直接デジタル放送を提供する。

BSAT3A

2007年8月14日23時44分(UT)にクールーからアリアン5-ECAロケットで打ち上げられました。1.98トン(燃料含む)の機体に130WのKuバンドトランスポンダを12個搭載し、東経110度以上に駐機して日本全国にハイビジョン番組を直接提供する。この衛星は、BSATコーポレーションの他の4つの衛星に加わった。

BSAT 3B

2010年10月28日21時51分(UT)にクールーからアリアン5ロケットで打ち上げられた通信衛星である。重量は2060kgで、東経110度の位置に設置される予定。130WのKuバンドチャンネルを12個搭載し、8個が同時に動作するため、衛星放送サービスの提供において重要な役割を果たす。設計寿命は15年とされている。

BSAT 3C

2011年8月6日22時52分(UT)にクールーからアリアン5ロケットで打ち上げられた日本の人工衛星。BSAT 3C/JCSAT 110Rと呼ばれるこの衛星は、重量2.91トンで、日本の通信会社2社の15年間のタンデムミッション用に設計されている。この衛星はテレビ放送に使用される。また、スカパーJSATは、直接デジタルテレビ番組を含むその他の通信サービスのために、追加容量を管理する。BSAT3Cは、赤道上の東経110度の静止軌道を目指し、運用を開始します。24基のKuバンドトランスポンダを搭載し、2つの事業者が分担して運用する。

BSAT 4a

株式会社放送衛星システム(BSAT)の日本におけるHD、4K、8K Ultra HDテレビ放送を提供する。この衛星は、カリフォルニア州パロアルトのSpace Systems/Loral社によって製造され、24個のKuバンドトランスポンダを搭載している。

BSAT 4b

放送衛星システム株式会社(B-SAT)の放送衛星です。日本国内でのダイレクト・トゥ・ホーム(DTH)テレビ放送に使用される予定。



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自営無線通信のエンジニアをしていました。現在はコンピュータ系。理科っぽいものが好きなので、電子工作、BCL、アマチュア無線、RCカー、カブトムシ、金魚、熱帯魚、自作コンピュータ、カメラ、ドローンなど一通り通過しております。 現在は、飛ぶものと昔のものに興味があります。

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