日本産業規格(JIS規格) 作成主体と著作権の問題

2022/06/26

JIS 規格 重箱の隅 著作権

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JIS規格の著作権について、調べてみたが複雑で異なる解釈や意見があり、すっきり結論を出せなかった。

日本産業規格(Japanese Industrial Standards)について

産業標準化法に基づき、認定標準作成機関の申し出又は日本産業標準調査会(JISC)の答申を受けて、主務大臣が制定する規格であり、日本の国家標準の一つである。JIS(ジス)またはJIS規格と通称されている。
1949年以来、長らく日本工業規格(にほんこうぎょうきかく)と呼ばれてきたが、日本の国内総生産の約70%がサービス業によるなど産業構造が変化したことを踏まえ、標準化対象のサービス業への拡大を含めた法改正に伴い2019年7月1日より改称された。JIS(ジス)という通称は変更していない。

JISは、日本全国を単位とした標準化のための基準である。この意味で、JISは日本の国家標準である。JISは、法律に基づく手続を経て制定される標準であり、JISには一定の公正さが期待できる。このため、日本の法令が技術的な基準への適合を強制するにあたって、その基準としてJISを採用することがある。
JIS自体は、JISに適合しない製品の製造、販売、使用、JISに適合しない方法の使用などを禁ずるものではない。この意味で、JISは基本的に任意標準である。ただし、国および地方公共団体に対して、JISは強制標準に準じた性格を有している。工業標準化法第67条は、国および地方公共団体が鉱工業に関する技術上の基準を定めるとき、買い入れる鉱工業品に関する仕様を定めるときなどに、JISを尊重すべきことを定めている。また、JISは法令が引用すれば、強制標準としてはたらくこともある。例えば、工業用水道事業法施行令第1条は、工業用水道事業者に対して、JIS K 0101 工業用水試験方法による水質の測定を、工業用水道事業法第19条の測定として義務づけている。

JIS制定のプロセス

原案作成

JIS制定の手続は、主務大臣の意思又は利害関係人若しくは認定産業標準作成機関の申し出によって開始される。
主務大臣の意思によってJISを制定するときは、主務大臣または主務大臣から委託を受けた者がJISの原案 (draft) を作成する。主務大臣は、標準化のための調査研究やJIS原案の作成を、国費を支出して日本規格協会(JSA)などの適当な者に委託する。JIS原案の作成を委託された団体には原案作成委員会 (drafting committee) が結成され、この委員会がJIS原案を作成する。
主務大臣はできあがった原案を日本産業標準調査会(JISC)に付議する。ただし認定産業標準作成機関が原案を作成した場合は付議を要さない。
利害関係人は、みずから作成した原案を添えて、主務大臣に工業標準を制定すべき旨を申し出ることができる。申し出を受けた主務大臣がJISを制定すべきと認めるときは、大臣はその原案をJISCに付議する。制定の必要がないと認めるときは、大臣はJISCの意見を徴したうえ、その旨を理由とともに利害関係人に通知する。
現在、つくられる規格の約80パーセントは利害関係人からの申し出による。(日本工業標準調査会 2003)

制定

日本産業標準調査会 (JISC)は、その標準部会 (the Standard Board) のもとに設置された専門委員会 (technical committee) において、主務大臣から付議された原案の審議 (investigation) および議決をする。標準部会長から上申を受けた調査会長は、主務大臣に答申する。JISを制定すべき旨の答申を受けたとき、主務大臣がJISの制定 (establishment) をする。

主務大臣は環境大臣、経済産業大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、総務大臣、農林水産大臣、文部科学大臣または内閣総理大臣である(産業標準化法第72条)。複数の主務大臣が連名でJISを制定することもある。
JISを制定した主務大臣は、その旨の公示 (announcement) をする。公示は、名称、番号、および制定年月日を官報に掲載することによりおこなわれる(産業標準化法施行規則第3条)。JISの内容は官報には掲載されない。内容は経済産業省本省、経済産業局、沖縄総合事務局または都道府県庁で閲覧に供される。と共に調査会のサイトにおいてPDFで閲覧することもできる。
認定産業標準作成機関は、2019年の改正であらたに作られた。JISの原案を作成する約300ある業界団体のうち、これまでに十分な実績があって、適正な合意形成プロセスを持つ団体については、「認定産業標準作成機関」として認定する。「認定産業標準作成機関が原案を作成した場合は付議を要さない。」とされているため、これらからの原案については、審議会での審議を省くことで制定のスピードアップがされる。

確認、改正または廃止

主務大臣は、JISの制定、確認または改正の日から5年以内に、それがなお適正であるかをJISCに付議する。JISCの答申に基づいて、主務大臣はJISの確認 (re-affirmation)、改正 (revision) または廃止 (withdrawal) をおこなう。
制定、確認または改正から年月が経過しても規格が適正であるとき、規格は確認される。年月の経過にともなって規格を改める必要が生じたとき、規格は改正される。年月が経過して規格がもはや不要になったとき、規格は廃止される。
主務大臣は、JISを確認、改正または廃止したときには、制定したときと同様に、その旨を公示する。

適合性

製品がJISの要求を満足していることをJISに適合しているといい、適合していることを適合性 (conformance) という。製造者や輸入者が製品のJISへの適合性を取引者や需要者に示す手段として、第3者による認証 (certification)、第2者による確認および第1者の自己適合宣言の三つがある。

認証

2005年10月1日から施行された改正法のもとでは、製品のJISへの適合性を登録認証機関が認証する。製造者または輸入者は、登録認証機関に認証を申請し、登録認証機関による審査を受ける。適合性の認証を受けた製品には、JISマークを表示することができる。

規格票

JISの内容は規格票という文書にあらわされる。
規格票の発行は、その「出版に関しては、規格の適正かつ網羅的な普及の観点から、あらゆる規格について需要に応じ一元的に販売できる体制を整えることが必要である」ことから、日本規格協会 (JSA)に委託されている。2009 (平成21)年度においては、規格票とJISハンドブックの販売によるJSAの収入は、1,574,901,508円であった。
規格票の様式はJIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法 (Rules for the layout and drafting of Japanese Industrial Standards) というJISに規定されている。

JISマーク

JISマークは、製品がJISへの適合性の認証を受けたときに、製品そのもの、製品の包装、製品の容器または製品の送り状に付することができる、JISへの適合性を示すためのマークである。
JISマークは、1949年(昭和24年)の工業標準化法制定以来付されてきたマークであったが、2004年(平成16年)の工業標準化法の改正により従来とは異なる新たな表示制度に改正された。これに伴いマークのデザインも刷新された。

 

旧JISマーク
ja:JIS, Public domain, via Wikimedia Commons
旧JISマーク


JISマーク
See page for author, Public domain, via Wikimedia Commons
JISマーク

JIS原案の作成主体と著作権の問題

JIS規格の内容は経済産業省本省、経済産業局、沖縄総合事務局または都道府県庁で閲覧に供される。と共に日本産業標準調査会(JISC) のwebサイト(https://www.jisc.go.jp/)においてPDFで閲覧することもできる。このサイトにおいての閲覧はあらかじめ、氏名、生年月日、住所、電話番号、所属、メールアドレスを登録し、登録IDでログインしなければならない。またダウンロードやプリントアウトをすることはできない。
日本産業標準調査会 登録方法https://www.jisc.go.jp/site/pdf/sousa-manual.pdf
プリントアウトやデータが必要な場合は日本規格協会から出版されている「規格票」か「JISハンドブック」を購入する必要がある。
ここで問題となるのが、国または、それに類する機関が発行した物は、国際的にも著作権の保護の対象にならない(パブリックドメイン)のが一般的であるがJIS規格の場合、著作権の所在がかなりあいまいなまま、著作権の保護対象であるため広く公開されていない。
海外では規格を作成、管理する非営利団体などがあり、独立して運営されている(ISO,DINなど)規格を作成した団体にその研究・作成・管理したコストを支払い。著作権も厳格に管理されている。という立て付けになっている。JISの場合、民間が発案した規格を(国が発案する場合もある)国がコストの一部払い作成し、その研究・作成・管理したコストを委託されたもの「日本規格協会 (JSA)」に支払う。という独立性が不明瞭な形になっている。
国が作っている規格ならすべて広く公開(パブリックドメイン)すべきではないか、という考え方や、独立採算でJISが(またはそれに類する非営利団体など)がすべてのコストを負担し、その研究・作成・管理したコストを回収するために受益者に負担を求めるのが世界標準の考え方ではないか。など様々な意見がある。
現在、一部の法律や政令などでは、JIS規格を指し示し適応を求めている物が存在するがパブリックドメインであるはずの法律の中に、著作権を理由に広く公開していない部分が含まれてしまうことになる。もしこのような法律を読み理解しようとすると対応するJIS規格を購入しなければ、ならくなってしまう。
現状のシステムを維持したまま規格のすべてをパブリックドメインにするとようとすると、民間のステークホルダーが全体の八割を発案している現状では、発案のメリットが少なくなり、活発に発案が行われなくなる懸念やISO規格を踏襲する形で取り込んでいるJIS規格の著作権に新たな問題が発生する可能性もある。また、発案から管理をすべて非営利組織などの第三者機関に任せてしまうのも、規格を発案し管理し、組織を維持するだけのコストを賄いきれないのではないのではないか(国からの資金援助があったのでは現状と変わらない)などまだまだ、難しい問題がある。

参考:日本規格協会(JSA)
   JISC 日本産業標準調査会
   標準化・認証 (METI/経済産業省)

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